巨大な骨つきの豚肉と野菜をピリ辛スープで煮込んだカムジャタン。「カムジャ」と言えば普通「ジャガイモ」という意味で実際にカムジャタンにもジャガイモが入っているが、「カムジャタン」の「カムジャ」は「ジャガイモ」を表すのではない。「豚の脊椎骨の中にある脊髄をカムジャということに由来する」という説や、「豚の脊椎骨を部位別に分ける時カムジャピョという部分があり、これを入れて作るということに由来する」という説があるようだ。いずれにしても「カムジャタン」は、豚の脊髄や脊椎(カムジャ)を使ったタン(湯=スープ)ということになる。
カムジャタンは三国時代(高句麗・新羅・百済)に、当時養豚で有名だった現在の全羅道地域(百済)で生まれ、全国に広がった韓国の伝統料理。農耕に利用される貴重な牛の代わりに豚の骨から抽出されるスープで食べ物を作り、骨が弱い老弱者や病気を患っている人に食べさせたのだそうだ。
さて現代のカムジャタンは、2~3人以上の複数人で一つの大きな鍋を囲んで食べるのが一般的。「小(2~3人分)」、「中(3~4人分)」などと人数に応じて注文できるようになっている。しかし1人分というのはない。“たまたま一緒に食事をする相手がいないが、どうしてもカムジャタンが食べたい”というときには、「ピョダギヘジャンクッ」がおすすめだ。「ピョダギ」は「骨」、「ヘジャンクッ」は「酔い覚ましのスープ」で飲みすぎた翌日や二日酔いのときに飲むとよいとされているスープ。カムジャタンを1人分のトゥッペギ(土鍋)で煮たものがピョダギヘジャンクッだ。ただ、カムジャタンには入っているジャガイモがピョダギヘジャンクッには入っていないことが多い、という違いはあるが味も具材もほとんど同じだ。
グラグラと煮えたぎった状態でピョダギヘジャンクッがテーブルに運ばれてきたら、まずは一緒に出てくるそうめんをスープに入れる。あらかじめ茹でられているそうめんなので、熱々のスープに入れておけばすぐにほぐれておいしく食べられるようになる。そして好みですりゴマや塩・コショウなどで味を調える。スープはそのままでもなかなかの辛さだが、特に辛い味が好きな人は青唐辛子のみじん切り(激辛)を加えて。
