現在も韓国に残っている日本語がたくさんある。例えば、「うどん」「わりばし」「つめきり」「ゆとり」「おぼん(お盆)」などがそうである。「おでん」もその一つだ。
しかし日本で言うおでんと、韓国で言うオデンは随分違う。韓国のオデンは料理名ではなく、魚肉の練り製品そのものを指す。形は薄いさつま揚げのようなものや棒状のものなど、2~3種類程度だ。オデンの調理方法にはいろいろある。まず、日本でもよく見かける保温器にだしを張り、その中で長い串に刺したオデンを煮る方法。屋台や小さな食堂の店頭などでよく見かける。だしには昆布や青ネギ、輪切りの大根などが入っていることが多いようだ。風味のあるおいしいだしだ。
客は食べたいオデンを選んで、醤油ベースのソースにつけて食べる。ちょっと小腹が空いたときの間食として食べられることが多く、たいていは立ち食いスタイルだ。オデンは普通1本500~600w。値段が違うオデンが何種類かある場合は、串に目印がつけてある。食べ終えたら店員が串の本数を数えて代金を計算する。
また、屋台でおなじみのトッポッキ。トッポッキといえば棒状の餅を真っ赤な辛いタレをからめて食べる間食の一つだが、餅と一緒にオデンが入っていることもある。真っ赤に染まったオデンは特に若い人に人気だ。
さらに家庭でも、日々のおかずとしてもよく食べられる。野菜と一緒に炒めたり、コチュジャンベースのソースで和え物にしたり。一度にたくさん作って冷蔵庫で保存し、食事のときに必要な量だけ取り出して食べるミッパンチャン(日本で言う常備菜)の一つだ。
このようにさまざまな料理法で広く韓国人に愛されているオデンだが、「ミョンソンフェッチプ」のオデン定食は、韓国の一般的なオデンとは少し違う。具の種類が多く、一見日本のおでんに似ていなくもない。しかしよく見ると、日本のおでんにはない具がたくさん入っていて、“日韓おでんの融合”といったところだろうか。このようなスタイルのおでんは、釜山ではまだ他の店では見たことがない。
具は韓国のオデンやかまぼこ、ワカメ、タコ、薄切りこんにゃく、大根、サトイモ、豆腐、スジ、玉子、油揚げの中にタンミョン(ジャガイモのデンプンで作った乾麺)が入ったきんちゃく、ロールキャベツ。お好みで韓国式に醤油ベースのソースをつけていただく。カラシも添えられている。ダシも実においしい。
具は日本と同じものもあれば、日本のおでんには入っていないようなものもあり、その差がまた面白い。カラシをつけて食べるのは日本との共通点だが、醤油ベースのソースは韓国風だ。具は少し違っても、日本人の口にもよく合うと思う。寒い日にはぴったりの料理だ。
