その店のことを初めて知ったのは、もう随分前のことだ。それが店であるとも知らずたまたま前を通りかかったとき、木の囲いの向こうから人の話し声が聞こえてきたのだ。囲いの向こうの様子は外からは見えない。よく見てみると、「パッピンス」「ぜんざい」という小さい看板が出ている。その囲いの向こうでパッピンスやぜんざいが食べられるようだ。折りしもその日はとても暑い夏の日。パッピンスで涼をとろうと、半ば恐る恐るその囲いの向こうに空間へと足を踏み入れた。それがその店との最初の出会いだった。
 その木の囲いの中には思いがけない空間が広がっていた。手作り感あふれるスペースには、テーブルや椅子が置かれ空間を取り囲むようにたくさんの緑も配されている。もともと「寶城緑茶(ポソンノクチャ)」というお茶の販売店なのだが、店舗横のスペースを活用して店のご主人が趣味も兼ねて少しずつ作り上げた空間なのだそう。プロの大工仕事のように寸分の狂いもないというのではなく、いかにも趣味で作りましたという素朴な感じが好印象だ。とても落ち着くくつろぎの空間となっている。

 完全な密閉空間ではない半屋外だが、夏は日除けの天幕に扇風機、冬は個室風にしつらえた空間にビニールの風除けを張り、年中快適に過ごせるよう工夫されている。店に行くたびに拡張・改造されている空間を見るのもまた、楽しみの一つとなった。
そんな手作り空間でいただけるのは、パッピンスとぜんざい(いずれも2,000ウォン)。店で丁寧に煮て作った自家製あんこが絶品だ。甘すぎず、小豆本来の味を充分堪能できる。パッピンスは年中注文可、ぜんざいは冬季のみの販売だ。

 パッピンスには抹茶パウダー、ぜんざいにはシナモンパウダーがトッピングされている。頼めばシナモンパウダーを抹茶パウダーに変更することも可能。
おいしいその味と店のあたかかい雰囲気が人気で、どの季節に行っても大勢の客で賑わっているこの店。この冬もまたぜんざい目当てに何度通うことになるだろう・・・。釜山=牧野 美加
寶城緑茶(ポソンノクチャ)釜山支社 釜山市水営区南川洞363-3 (051) 625-5544 営業時間:10~22時 定休日:なし
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