韓国には「以熱治熱(イヨルチヨル)」という言葉がある。「熱を以って熱を治める」、つまり暑い夏にこそ熱々のスープを食べて暑さを吹き飛ばすという発想。サムゲタン(参鶏湯)はその代表的な料理だ。
とは言っても、暑いとやはり冷たい食べ物も食べたくなる。ミルミョンや冷麺はツルツルとのどごしもよく、食欲があまりないときにも食べやすい料理だが、もう1つおすすめなのが물회(ムルフェ)だ。
「ムル」は「水」、「フェ」は「刺身」。ピリ辛のタレで和えた刺身や野菜に氷水を注いで食べる料理。基本的に「刺身をひんやりといただく」というのは共通しているが、地域によってスタイルは少しずつ違うようだ。
広安里(クァンアルリ)ビーチ沿いにある「名品물회(ムルフェ)」という店は、ムルフェと炭火ウナギ焼きの専門店。海に面した建物の2階にあり、大きな窓を開け放つと涼しい海風が入る。

主なメニューはムルフェとウナギ焼きだが、他にもホヤのピビムパッや刺身のピビムパッ、クロソイのメウンタンなどいろいろある。ムルフェは5種類(13,000~18,000ウォン)。こちらは一番スタンダードなムルフェ(13,000ウォン・▼)。

大きな器にキュウリや梨の千切りをたっぷり入れて、その上にコチュジャンと刺身(ヒラメ)をのせ、とびこや青唐辛子のスライス、海苔をトッピングしてある。
ムルフェといえば氷を浮かべた冷たいスープに刺身が入っているイメージがあったが、この店は器には具材だけが入っており、別途、シャーベット状のスープが運ばれてくる(▼)。これで2人分。たっぷりの量だ。

お玉ですくった感触としては大根おろしのような感じで、見た目通り、ピリ辛だ。ほかのテーブルの客たちはこれをほとんど全部かけて食べていたが、刺身の下にもコチュジャンが入っているし、辛いものが苦手な人は味をみながら少しずつかけた方がよいだろう。
シャリシャリのスープをかけて全体をよくかき混ぜていただく。そのまま食べてもおいしいが、サンチュなどで包んで食べてるとよりおいしい。刺身の量はそう多くないが、キュウリや梨がたっぷり入っているので、かなりおなかいっぱいになる。

これに、付け合わせのおかずと、白玉団子入りのワカメスープ(▼)がついてくる。この白玉団子はこちらでは새알(セアル)と呼ばれ、冬至の小豆粥にも入れる。鳥の卵という意味だ。コクがあっておいしいワカメスープだった。釜山=牧野美加

名品(명품)물회(ミョンプン ムルフェ)
釜山市水営区南川2洞5-3 2階
(051) 755-1755
地図→ http://map.konest.com/dloc/501738/283618/12?ln=1 (赤い矢印の場所)