「TOYA KATSU(トヤカツ)」
学生時代、トンカツを通して洋食界に入門した。ナイフとフォークを使う方法もトンカツを食べながら覚えた。だが、学校を卒業した後は、トンカツをあまり食べなくなった。年を取ってますます口が肥えていったが、トンカツはいつも当時の味のままだったからだ。しかしトンカツの味が決して当時のレベルに留まっている訳でないことを、後に日本に行ってわかった。日本のトンカツは大人になった私の口にも相変わらずおいしかった。豚肉、トンカツの衣、揚げる油。いったい韓国のトンカツは何が問題なのだろう。
「TOYA KATSU」! この街にこんな店があるとは知らなかった。厚いヒレ肉の「ロースカツ」を食べて、トンカツと恋に落ちそうな気がした。柔らかい肉質、ジューシーな肉汁、それにサクサクした衣と何一つ欠けたものはなかった。ソースなしで豚肉本来の味を楽しみたいほどだった。「チーズカツ(写真)」は豚肉の間にモッツァレラ チーズがたっぷり入っていた。長く伸びるチーズは、見ているだけでも食べたくなる。ただ、「ロースカツ」に比べて肉が薄いのが惜しまれた。次に行くときは柔らかい肉質の「ヒレカツ」を食べてみるつもりだ。
やっぱり肉料理は肉が美味しくなければならない。この店では 麦を食べさせて育てた国内産麦豚を使う。柔らかく、肉汁の多い豚肉だ。 店に届いたその日に調理する。また、最高級のパン粉とトランス脂肪のない植物性大豆油だけ使う。
「センソンカツ(魚のフライ)」もある。サクサクしたパン粉の中にスケトウダラが入っている。果たしてこれがスケトウダラかと疑うほど新鮮で芳醇な味だ。生ビールもあるので気軽に一杯やれる。
讃岐うどんやいなり寿司も美味しいと評判だ。寿司屋のカウンターのようなテーブルもあるので、一人で行っても心配ない。この日も一人で来たタクシーの運転手が美味しそうに食べる様子を目撃した。しかし先払いで、セルフサービスなのがちょっと残念だ。
照れ屋のオーナーシェフ、キム・ジョンヒョンさんが店のインテリアを直接選んだという。カウンターに座ると、ちょうど目の高さに暖簾が下がっている。どうしてこのようにしたかと尋ねると「小さい店でお互い見つめあったら、ちょっとはずかしいでしょ」と答えた。そこにキムさんの人柄が感じられた。ちなみに、とても小さい店なので、ちょっと驚くかもしれない。
ロース・ヒレ・チーズ・センソンカツ6,000~6,500ウォン。うどん・そば類3,500~4,000ウォン。セット1万~1万5,000ウォン。営業時間午前11時~午後9時。月曜休業。
釜山水営区民楽洞93民楽洞プルジオアパート102棟の向かい側。070-8782-3434
文=パク・ジョンホ記者
写真=ブロガー「ウリッピ」(busanwhere.blog.me)提供