海に面した釜山には、海雲台や多大浦、松亭など多くの海水浴場がある。その中の一つ、広安里(クァンアルリ)ビーチ沿いに、釜山ならではの独特の建物がある。水営(スヨン)区文化センターや、夏だけオープンする警察署などが入っている建物だ。
夏だけオープンする警察署というのもいかにもビーチ沿いの街らしいが、独特だというのはそのことではない。建物の外観のことだ。形も色も不ぞろいな板切れに、いかにも手書きらしい文字で言葉が書かれ、建物の外壁にたくさん無造作に貼り付けられているのだ。

これらの言葉は、ほとんどが釜山の方言だ。2008年の釜山ビエンナーレが開催されたとき、アート作品の一つとしてこのように貼り付けられたのだそうだ。中には詩的な表現を書いたものもあるが、多くは特徴的な「釜山のサトゥリ(方言)」を書いたもの。
標準語と比較してみると、例えば・・・
釜山方言の「パン ムンナ?」は、標準語で「パン モゴッソ?」 (ご飯食べた?あるいは単なる挨拶)
同じく「ウヤッコ」は標準語で「オットッケー」 (どうしよう)
「オムイ」は「オモニ」 (お母さん)
「タンディヘラ」は「タンダニ ヘラ」 (しっかりしなさい)
「マンダッコ」は「ムォル ハンダゴ」 (何だって?)
カタカナでは正確な発音は表記できないし、それに釜山の方言は音の変化だけでなく、その独特なイントネーション(抑揚)があってこそ完成するものなので、その雰囲気を味わうには実際に耳で聞いてみるのが一番。是非、釜山の街を歩きながら、食堂や店でアジュンマ・アジョシと話しながら、テレビを見ながら、愛すべき釜山のサトゥリを体験してみてはどうだろうか。
ちなみに、この“方言ビル”に入っている水営区文化センターでは各種展示会も随時開かれるので、併せて釜山のアートも楽しまれたい。釜山=牧野美加