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[釜山の老舗] 釜山の老舗 ⑨ 「ハルメクッパ」<上> - 「釜山ㆍ慶南」 旅行ㆍ情報の窓口
 
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釜山の老舗 ⑨ 「ハルメクッパ」<上>
避難民・労働者の血となり肉となり・・・釜山の人々のソウルフード
[Write date]  2011-05-25 오전 10:24:40

ある料理の地域における象徴性と大衆性を測る尺度が2つある。一つ目は「その料理が一番おいしい店はどこか」という質問を投げかけてみることだ。おいしいと言われる店がいくつもあってその中で「一番」を簡単に決められないなら、その料理は象徴性・大衆性があると言える。二つ目はその料理名の後に「~マニア」という言葉をつけてみるのだ。「マニア」をつけた言葉の響きが自然で、またマニアの層が厚いほど象徴性・大衆性が大きいと言える。

例えばソウルで、平壌(ピョンヤン)冷麺が一番おいしい店はどこかという質問をしてみよう。さまざまな答えが返ってくるだろう。冷やしたスープにそばの麺を入れただけの単純な料理だが、人々の好みはさまざまなので一番おいしい店を決めるというのはなかなか難しい。またソウルは勿論のこと全国的にも「自称・冷麺マニア」は星の数ほどもいる。冷麺ほど熱烈な「信徒」が多い料理も他にあまりないだろう。

平壌冷麺に匹敵する釜山の料理がテジクッパだ。その熱狂ぶりは単に「マニア」という表現では表せないほどだ。真のテジクッパ愛好家の中には「オレの血の一部には豚肉のスープが流れている」とまで言う人もいる。テジクッパは朝鮮戦争以降に大衆化された食べ物なので、50年以上になる老舗も少なくない。このような理由からテジクッパの店に限っては、老舗を探すことよりその中から一つを選ぶことの方がはるかに難しいのだ。

釜山・東区・凡一洞(ポミルドン)の「ハルメクッパ」もやはり、50年以上の歴史を持つ老舗だ。釜山で「テジクッパ四天王」を選ぶとすれば、その中の一つに入るほど味にも定評がある。同時に「ハルメクッパ」は、独特の地域的な象徴性を持っている。

まず少し歴史をひもといてみよう。東区・凡一洞と、釜山鎮区・凡川洞(ポムチョンドン)の境目にある「ポムゴック交差点」。朝鮮戦争が勃発し釜山が臨時首都となっていた当時、ここには交通部の庁舎があった。戦争が終わって60年近い年月が流れたが、いまだに「ポムゴック交差点」という名前より「交通部ロータリー」や「交通部交差点」という名前の方が人々の耳になじんでいる。

「ハルメクッパ」は平壌から釜山へ避難してきたチェ・スンボク氏(1923~2006)が、1956年に創業した。釜山鎮警察署で事務補助員として働きながら貯めたお金で、今は凡川商街(ポムチョンサンガ)となっている場所にあった市場の通りで、クッパ屋を始めたのだ。チェ氏の料理の腕前はかなりのもので、豚の頭と脚の骨でとったダシの味は口コミで広がり始めた。

何年か後「ハルメクッパ」は、映画『チング』に登場した凡一洞の陸橋横の日本家屋に移転した。当時近くには市内バスの車庫があった。常連客であった運転手たちのリクエストで、しばらくはテジクッパの他にキムチチゲもメニューにのせていたこともあった。現在「ハルメクッパ」を経営しているチェ氏の三男キム・ヨングン代表(61)によると、「料理上手な人だったので何を作ってもおいしかったですが、大ぶりの豚肉の塊が入っていたキムチチゲの味は、特に絶品でした」と話す。

「ハルメクッパ」は1970年にかけて現在の場所に落ち着いた。この頃から、近所にあった「三和(サムファ)ゴム」で働く人々が主な客となった。また週末ともなれば、近くの「ポリム劇場」に映画を観に来た人々が、必ず立ち寄っていく場所の一つでもあった。ゴムの粉にまみれ接着剤の匂いがしみついていた履物工場の労働者にとって、テジクッパは「解毒剤」でもあり気軽に食べられる栄養食でもあった。履物産業が好況を呈するとともに一時は「三和ゴム」の職員が1万人にもなり、「ハルメクッパ」もその影響で大繁盛した。テジクッパを食べながら数十年前のことを懐かしく思い返す「三和ゴム」の元職員のお年寄りが、今でも大勢「ハルメクッパ」を訪れる。

(▲「ハルメクッパ」の創業者、故・チェ・スンボク氏(前列右)と、平壌から一緒に避難してきた友人たち。1980年代中ごろ、現在の「ハルメクッパ」の前で。)

朝鮮戦争以降、交通部という名前はかろうじて地名に残るのみとなり、1992年に閉業した「三和ゴム」のあった場所にはアパートができた。2002年に無期限休業に入った「ポリム劇場」の場所は、現在マートになっている。このように「戦争」・「産業化」・「思い出」を象徴していたものが歴史の表舞台から消えていっても、「ハルメクッパ」は今も健在だ。クッパ1杯の中に地域の現代史が溶け込んでいるので、その味は格別だ。







 

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